レビー小体型認知症

レビー小体病とは?

原因は不明ですが、脳の広い範囲にレビー小体という異常な蛋白がたまり、脳の神経細胞が徐々に減っていく進行性の病気です。1990年代の後半になって広く知られるようになった比較的新しい病気です。

この病気の方はどのくらいいるのですか?

レビー小体病はアルツハイマー病、血管性認知症に次いで3番目に多い認知症です。認知症患者さんのなかでの割合としては、およそ20%くらいです。
100人中何人といった有病率は明確ではありません。

この病気はどのような人に多いのですか?

高齢の方、75~80歳くらいの方に多く認められます。

この病気は遺伝するのですか?

基本的には遺伝することはありません。

この病気ではどのような症状が起きますか?

レビ一小体病には3徴と呼ばれる特徴的な症状があります。
それは、1.認知機能の変動、2.繰り返し出現する幻視、3.パーキンソン症状です。

1.認知機能の変動

認知機能の変動とは、時間や場所、周囲の状況に対する認識や会話をした際の理解力など、悪い時と良い時の差が目立つという症状です。

2.繰り返し出現する幻視

幻視は、実際には存在しないものが見えるという症状ですが、人や子供が見えると言われることが多いです。また幻視は夜間に多くなります。

3.パーキンソン症状

パーキンソン症状とは、体や表情が硬くなる、体の動きが減る、運動がぎこちなくなる、手が震える、姿勢が前傾になる、バランスを崩しやすくなる、小股で歩く、突進して止まれなくなるなど、いくつかの運動症状が出現する状態のことです。立ちくらみや失神、便秘などの自律神経症状が起こることもあります。
そのほか、誰かがいる気配がすると感じたり、家族が偽物だと思ったり、自分の家ではないと思ったりする妄想が出ることもあります。

このように、レビー小体病の方にはさまざまな精神症状が出現しますから、統合失調症の妄想や幻聴の治療薬を使うことがあります。
しかし、これらの抗精神病薬の副作用が出やすいという特徴もあります。
また、ごく初期から「レム睡眠行動障害」という睡眠中の行動異常を起こす患者さんもおられます。
レム睡眠は睡眠の「段階」の1つで、人が夢を見るのは、多くはこのレム睡眠のときです。健康な人はレム睡眠の間は骨格筋の緊張が抑えられているため、夢を見ながら行動を起こすことはありません。しかし、レム睡眠行動障害がみられる患者さんでは、筋緊張の抑制が障害されるため夢を見ながら夢のなかの行動を実行するのです。

物忘れも認められますが、アルツハイマー病の患者さんと比べると、軽度であることが一般的です。幻視が強く出るタイプや、パーキンソン症状が目立つ方など、同じレビー小体病でも人によって症状の出方や進行の速さに差があります。

画像検査ではどのような所見がみられますか?

頭部MRIでは全般性の脳萎縮を認めます。海馬の萎縮はアルツハイマー病より軽度であるとされています。脳血流SPECT検査では頭頂葉、側頭葉、後頭葉という場所で血流低下を認めます。後頭葉はアルツハイマー病では低下しにくい場所なので、専門医はこういった点に注目しながらアルツハイマー病との鑑別をしています。MIBG心筋シンチグラフイーという検査では、心筋へのMIBGという薬剤の取り込みが低下しますので、これもレビー小体病の診断に役立ちます。

この病気はどのような経過をたどるのですか?

受診される診療科によって患者さんのタイプは異なるように思います。私たちのような神経科精神科には、認知障害、認知機能の変動、幻視が初めに現れたり、目立ったりする患者さんが多く来院されます。一方、神経内科にはパーキンソン症状の強い患者さんの受診が多いと思います。経過は、3徴のどの症状が目立つかによって異なりますが、アルツハイマー病や血管性認知症より進行は速く、全経過は10年未満とされています。
広く用いられているレビー小体病の重症度分類はありませんので、ここでは、これまでの研究論文、私たちやその他の専門家の観察をもとに重症度分類をしてみました。

初期

はじめに、便秘、嗅覚異常、うつ症状、レム睡眠行動障害が現れることが多いといわれています。その後、段取りの悪さ、物忘れ、立ちくらみ(起立性低血圧)が出現し、さらに3徴(①認知機能の変動、②繰り返し出現する幻視、③パーキンソン症状)が現れます。私たちのような神経科精神科に来院される患者さんでは、認知障害、認知機能の変動が目立ってきます。ただしこの時期では、認知機能が保たれている時間が長く、見当識や理解力も保たれ、周囲の人と心を通じ合わせることにも問題ありません。物忘れも軽く、あまり目立たないことが多いです。幻視、錯視(ハンガーに掛かった服を人に見間違えたり、壁のシミを虫に見間違えたりする)などの訴えは増えてきます。その他の幻聴、妄想も徐々に目立ってきます。たとえば、自分の家にいるのにここは自分の家ではないと言ったり、家族を偽物だと言ったりします。被害妄想、嫉妬妄想を伴うこともあります。

中期

パーキンソン症状が強くなり、歩行が困難になってきます。また、認知機能の悪い時間帯が長くなってきます。つまり、見当識や理解力が落ちて、周囲の人と心を通じ合わせにくい時間帯、記憶の悪い時間帯が増えてきます。また良好な時間帯でも能力が低下してきます。幻視、妄想などの対応に困るBPSDも顕著になります。日常生活上の介助支援が必要になってきます。

後期

パーキンソン症状、認知障害がさらに悪化し、日常生活に常に介助が必要になります。
車椅子の利用を余儀なくされる方が多いです。嚥下障害も目立ってきます。認知の変動は徐々に目立たなくなり、常に悪い状態となってきます。

このサイトでは、寝たきりになってしまう最重度期を除いた、初期・中期・後期について説明しています。
早期に適切な診断とケアプランを立てることで、被害妄想などの精神症状や、行動異常をある程度予防することができますし、先を見越して日常生活動作(activities of daily living; ADL)への支援を行うことができます。

この病気にはどのような治療法がありますか?

残念ながら、レビー小体病を完全に治したり、進行を止めたりする薬はありません。ただ、認知機能の低下や変動、幻視に対して、アルツハイマー病の治療薬であるコリンエステラーゼ阻害薬が有効な場合があります。また抑肝散という漢方薬も幻視、気分の不安定さなどに対して効果があるという報告があります。ただしこれらの薬は2012年4月現在、レビ一小体病の治療薬として保険適用を得ていません。パーキンソン症状に対しては、パーキンソン病の治療薬を用います。

出典:認知症知って安心!症状別対応ガイド( メディカルレビュー社 )
監修:大阪大学大学院医学系研究科精神医学教室 教授
武田雅俊
著者:大阪大学大学院医学系研究科精神医学教室
数井裕光 杉山博通 板東潮子