前頭側頭型認知症

前頭側頭型認知症とは

原因ははっきりとはわからないのですが、脳のなかの前頭葉と側頭葉の神経細胞が少しずつ壊れていくことによって、いろいろな症状が出てくる認知症です。初めに現れる症状は、他人に配慮することができないとか、周りの状況にかかわらず自分が思った通り行動してしまう、といった性格変化や行動異常であって、物忘れではありません。そのため、単に性格が変わっただけと思われて、病気の発見が遅れがちになります。病気の始まりから終わりまで、この性格変化と行動異常はほかの症状よりも目立ちます。ピック病と呼ばれることもあります。

この病気の方はどのくらいいるのですか?

頻度については明らかにされていません。認知症専門外来を受診する方の7%くらいがこの病気だというデータがあります。

この病気はどのような人に多いのですか?

ほかの認知症より若年で発病することが多く、わが国の統計によると65歳未満で発症する若年性認知症のなかでは血管性認知症、アルツハイマー病に次いで、3番目に多い病気です。ほとんどの方が70歳頃までに発病します。

この病気は遺伝するのですか?

海外では30~50%の患者さんに家族歴を認めますが、わが国では家族歴のある患者さんはほとんどいません。したがって、わが国においては、ほとんどの患者さんは、はっきりと遺伝するものではないと考えられます。ごく一部に遺伝子異常がわかっていて、遺伝するタイプもあります。

この病気ではどのような症状が起きますか?

ルールを守ったり、他人に配慮したりすることができなくなり、周りの状況にかかわらず、自分が思った通り行動してしまいます。たとえば、店のものを断りなくもってきてしまう、交通ルールを無視して赤信号を通過してしまう、などです。このほか、こだわりが強くなったり、毎日決まった時間に決まったことをする、といった症状が起こります。

画像検査ではどのような所見がみられますか?

典型的な患者さんでは、頭部MRIで前頭葉や側頭葉に限局した強い萎縮を認めます。またMRIでは軽度の萎縮を認める程度でも、脳血流SPECT検査で明瞭な前頭葉、側頭葉の血流低下を認める患者さんもいます。専門医は正しい診断のために、このような異常所見を確認しています。

この病気はどのような経過をたどるのですか?

前頭側頭型認知症の経過が最近まとめられました。

前頭側頭型認知症の経過 画像を拡大する

この病気の方は、初期のうちから、毎日決まった時間に決まった行為をすることへのこだわりや、周囲への配慮に欠けた行動が多くみられます。またそれを制止されると、興奮したり暴力をふるうなどのBPSDが、病初期から目立つこともあります。このため、比較的早期から精神科の専門病院などに入院される患者さんもおられます。
しかし、病気の進行に伴い、すべての患者さんで意欲や活動性の低下が強くなります。
そして初期の頃にみられていた配慮に欠けた行動や興奮、暴力行為などは逆に目立たなくなってきます。同じ行為の繰り返しについても、複雑な行動は減り、膝をさする、ズボンのしわを指でなぞるというような、単純な行動が残ります。さらに進行すると言葉を発しなくなり、椅子に座ったり、ベツドに寝たままで何もしようとせずに過ごすようになります。運動機能も廃用症候群のために徐々に障害されてきます。

この病気にはどのような治療法がありますか?

残念ながら、前頭側頭型認知症を完全に治したり、進行を止める薬はありません。社会生活上、迷惑となるような行動がみられた場合、生活環境を調整したり、場合によっては短期入院を行うことによって、その行動を別の、より許容できる行動にかえられることがあります。

出典:認知症知って安心!症状別対応ガイド( メディカルレビュー社 )
監修:大阪大学大学院医学系研究科精神医学教室 教授
武田雅俊
著者:大阪大学大学院医学系研究科精神医学教室
数井裕光 杉山博通 板東潮子