レビー小体型認知症にみられる症状と適切な対応

更新日:2021/12/08

記事監修

大阪大学大学院 医学系研究科 精神医学分野 教授
池田 学 先生

レビー小体型認知症でみられる主な症状と、それに対する適切な対応について紹介します。

レビー小体型認知症の主な症状

レビー小体型認知症では、見えないものが見えたり(幻視)、認知機能が良い時と悪い時の波がある(認知機能の変動)、歩行など動作の障害(パーキンソン症状)、大声での寝言など睡眠中の行動異常(レム睡眠行動障害)など特徴的な症状があらわれます。

もの忘れや注意力の低下、視覚認知の障害などの認知機能障害もみられますが、初期から中期にかけては目立たないことも少なくありません。ですので、認知症と認識されにくく、別の精神疾患と誤診されてしまうこともあります。

幻視・見まちがい・妄想

幻視:見えないものが見える

幻視

実際にはないものが、本人には実在するものとして生々しく見える症状です。見えるものは人により異なりますが、虫や小動物、人など、多くは動きを伴うものです。聞こえるはずのない音が聞こえる「幻聴」や、いないはずの「人の気配」を感じることも少なくありません。
レビー小体型認知症は初期のうちはもの忘れが目立たたないため、幻視の内容を正確に覚えていることも多く、それが不安や興奮などにつながってしまうこともあります。

見まちがい:錯視

見まちがい

ハンガーにかかった服が人に見えるなど、視界に入ったものを別の物と見まちがえてしまう症状です。周囲のものがゆがんだり、曲がったりして見える(変形視)こともあります。

幻視・見まちがいへの対応

環境

室内の環境が関係することが多いため、まずはそこを見直します。なかでも重要なのが照明です。幻視や見まちがいは暗い場所で起こりやすいからです。室内の明るさを統一し、影をつくらないことが症状を減らす助けになります。壁に洋服をかけない、目立つものは置かない、壁紙を無地のものにするなど室内環境をシンプルに保つこともポイントです。

安心

幻視は本人にははっきりと見えているため、そのことを否定せず、理解し、受け入れる姿勢が大切です。「錯覚だ」などと無理やり現実を押しつけるような対応は、本人が混乱するだけではなく、「妄想」に発展してしまうこともあります。幻視は近づいたり触れたりすると消えてしまうこともあります。幻視に恐怖を感じているようなときは、あえて本人や介護者が近寄り、触ってみるのも一つの方法です。

妄想

アルツハイマー型認知症でよくみられる妄想は、もの忘れを原因とした被害妄想です。一方のレビー小体型認知症の方の妄想は、「ハエがたくさん飛んでいて自分にまとわりついてくる」、見知らぬ人がぞろぞろと来て、家を乗っ取ろうとしている」など、幻視や見まちがい、思いちがいによるものがほとんどです。「妻が見ず知らずの男性と仲良くしている」といった嫉妬妄想がみられることもあります。

妄想への対応

妄想は本人の思い込みが強く、言葉で説明してもなかなか理解するのは困難です。思い込みを無理に正そうとすれば、苛立ちを募らせてしまうこともあります。まずは本人の話に傾聴して不安に寄り添ったり、優しく手を握ったりしてみましょう。それだけで心が落ち着く場合もあります。なお、家族や介護者が妄想の対象となってしまった場合は、無理に関わろうとせず、接点を減らすことで妄想が軽くなることもあります。

認知機能の変動(頭がはっきりしているときとそうでないときの差が激しい)

頭がはっきりとしている状態とボーっとして理解力や判断力が低下している状態が、寄せては引ける波のように変動します。変動の周期は人それぞれで、数時間ないしは1日おきのこともあれば、1週間、1カ月のこともあります。
頭がすっきりしたときに「自分は何をしていたんだろう」と、状態が悪くなっていたことに本人が気付くこともあります。

認知機能の変動への対応

大切なのは、認知機能の変動が生じることを念頭に置き、その周期を把握しておくことです。そうすることで大事なことは頭がはっきりしている時に伝え、ボーとしている時は「一人で歩かせない」「そばで見守る」など適時適切な関わりが可能になります。
人によっては認知機能が悪くなる前に、何らかのサインがあらわれる場合もあります。

自律神経症状(起立性低血圧・体温調節障害・頻尿・めまい)

レビー小体型認知症では、脳だけでなく心臓や食道などの自律神経にも異常物質であるレビー小体があらわれることがあります。これにより身体のバランスを保つ自律神経の働きが乱れてしまうと、身体にさまざまな変調を来します。

これらの症状は単独であらわれるとは限りません。いくつもの症状が生じるもあります。以下、代表的な症状と対応について紹介します。

起立性低血圧

自律神経症状で多くみられるのが、起立性低血圧です。起き上がったり、立ち上がったりしたときに血圧が低下し、立ちくらみやふらつきが生じます。失神や転倒のおそれもあるため、筋力が衰えている高齢者は特に注意が必要です。自律神経がうまく機能せず、心臓が十分な血液を送れなくなることが原因です。

起立性低血圧への対応

起床時は、体の向きを変えながら、ゆっくりと時間をかけて起き上がりましょう。起き上がった後もすぐに立ち上がり、歩き出すのではなく、その場で脚の上げ下げをするなど徐々にならしていくことがポイントです。食べすぎや飲酒など誘因となる行動を控えるほか、水分を多めに摂取することなども大切です。

めまい

めまいの症状は、身体や足元がぐるぐると回るように感じる「回転性めまい」、身体がふわふわと揺れているように感じる「浮動性めまい」、大きく2つに分けられます。レビー小体型認知症では、起立性低血圧などに伴う浮動性めまいが多くみられます。

めまいへの対応

立ちあがった時にめまいを感じたら、転倒のおそれがあるため無理に歩くことはせず、いったん座ったりしゃがんだりして、しばらく安静にします。めまいが悪化しないよう頭はできるだけ動かさず、身体を締め付けているものがあれば緩めるとよいでしょう。浮動性めまいは、数分で軽くなることも少なくありません。

体温調節障害

体温の調節の機能に不具合が生じ、多汗や寝汗などの発汗障害が起こることがあります。手足の冷えが起こりやすくなるほか、免疫機能や代謝機能も低下します。

体温調節障害への対応

手足の冷えには入浴や足浴、手浴が効果的です。体温より少し高い程度のぬるめのお湯にゆっくりと入浴することで、心身のリラックス効果も期待できます。エアコンのドライ機能や加湿器などをうまく利用して、室内の温度や湿度の快適に保つのも効果的です。

排泄にまつわる症状

便秘や頻尿・尿失禁がよくみられます。特に便秘は要注意で、腸閉塞の原因になったり、幻視や妄想、抑うつなどの症状が悪化させることもあります。

排泄にまつわる症状への対応

頻尿・尿失禁を過度におそれて、水分をひかえるのは避けましょう。高齢者は脱水症状を起こしやすく、水分不足は便秘の原因にもなるからです。適度な水分摂取が基本となります。薬物治療という選択肢もありますので、症状がひどい、あるいは認知症に悪影響を及ぼしている場合は、早めに医師に相談しましょう。

パーキンソン症状

レビー小体型認知症では、幻視や認知機能の変動と並び、初期のうちからパーキンソン症状がよくみられます。手足が震える、動きが遅くなる、表情が乏しくなる、ボソボソと話す、筋肉・関節が固くなる、姿勢が悪くなる、歩きづらくなる、転倒しやすくなるなど、身体にさまざまな症状が生じます。

歩行障害

段差のない平らな床面でつまずく、すり足になる、小股で歩く、前かがみになる、腕の振りが小さくなる、一歩目の足が出にくい、曲がりにくい、歩き出すと止まれないなど、普通に歩くことが難しくなります。

転倒に注意

パーキンソン症状が出ている場合に特に注意したいのが転倒です。筋肉や関節が固くなり、身体のバランスがとりづらく、歩行も小刻みとなるため、つまずいたり転んだりしやすくなります。受け身をとったり手をついたり反射的に危険を回避する能力も衰えているため、骨折などの大怪我につながってしまうことも少なくありません。

パーキンソン症状への対応

家の中につまずきや転倒につながるような危険がないかをチェックして、段差を解消したり、手すりを設置したり、コード類をひとまとめにするなどの対応をとるとよいでしょう。足腰の筋肉を維持するために壁に手をつけてスクワットなど簡単な運動をしたり、固くなった筋肉をほぐすためのストレッチも効果的です。
なお、パーキンソン症状のある人に、後ろから不用意に声を掛けるのは避けてください。驚いて振り向いた拍子にバランスを崩し、転倒してしまうことがあります。

レム睡眠行動異常症(夢をみている睡眠時の異常な行動)

睡眠は、その深さや状態から「レム睡眠」と「ノンレム睡眠」に区別されます。レム睡眠は眠りが浅く、脳が活動している状態で、まぶたの下で眼球も動いています。夢をみるのもレム睡眠のときです。反対にノンレム睡眠とは深い眠りのことで、脳も熟睡している状態です。眼球の動きも穏やかです。
ただし、レム睡眠のときも手足の筋肉は休んでいる状態です。夢を見ても、その内容に合わせて動き回ってしまうようなことは通常はありません。
しかし、レビー小体型認知症では大声で寝言を言う、奇声を上げる、怒る、怖がる、手足を動かすなど、レム睡眠時に異常な行動がよくみられます。このような異常は、多くの場合、追いかけられる、暴力をふるわれるなど怖い夢を見ているときに出てきます。レム睡眠行動障害はレビー小体型認知症の最初の症状として起こることが多く、中期以降にはみられなくなることがほとんどです。

レム睡眠行動異常症への対応

睡眠中はレム睡眠とノンレム睡眠を繰り返していて、朝方のレム睡眠は長く続くことが多いとされています。
朝方に大声での寝言など異常な行動が出て、10分以上待っても治まらなければ、部屋を明るくしたり、目覚まし時計を鳴らすなど、自然に目が覚めるように働きかけます。このとき身体を揺するなどして、無理に起こすのはやめましょう。強い刺激によって、怖い夢と現実がごちゃまぜになり、興奮してしまうことがあるからです。
就寝してから約90分後に訪れる最初のレム睡眠は比較的短く、異常な言動がみられてもおおよそ10分以内に治まるため、よほどの危険がない限りは見守りが基本となります。
睡眠の質を整えるのも大事なポイントです。たとえば、格闘技や不安や恐怖を感じるようなテレビ番組を寝る前に見るのを避けるように心がけましょう。夜にぐっすり眠るためには、身体を動かしたり、昼寝はしないなど、規則正しい生活を送ることも大切です。

抑うつ症状(意欲や気力の低下)

抑うつ症状もレビー小体型認知症で多くみられる症状の1つです。とくに初期にあらわれやすく、「気分がふさぎこむ」「悲観的になる」「憂うつになる」などして、意欲や自発性が低下します。パーキンソン症状や幻視からくる不安感などが、抑うつ症状の原因となっていることも少なくありません。うつ病や脳血管性うつ病と診断されてしまうこともよくあります。

抑うつ症状への対応

本人の言うことを尊重、受容しつつ、負担にならない程度に意思決定を促していくことが大切です。安心感を持てるような環境を整えたり、働きかけをしたりするなど、孤独な状態にならないような目配り、気配りを心掛けるとよいでしょう。

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