エーザイ

認知機能を維持させるポイント
健康的な食事

更新日:2021/12/08

記事監修

九州大学病院 精神科神経科 診療准教授
小原 知之 先生

栄養バランスのとれた、健康的な食事をしましょう

食事や栄養は認知機能の低下と関連することが研究で示されています1。WHOガイドラインでは、食事が認知症や認知症のリスクを高める病気(脳血管疾患や糖尿病など)に影響しているとし、健康的な食事は認知症を予防する可能性が高いとしています。

WHOガイドラインの推奨
  1. 健康的なバランスのとれた食事をすべての成人に「強く勧める」。

    WHOファクトシートの「健康食に関する推奨」では、以下のような食事を「健康的な食事」としています2
    ・果物、野菜、豆類、ナッツ、全粒穀物(玄米、キビ、オーツ⻨など)
    ・1日あたり400gの果物と野菜(デンプン質の根菜は除く)
    ・総エネルギー摂取量に占める糖質は10%未満(約50g)
    ・総エネルギー摂取量に占める脂質は30%未満(飽和脂肪酸やトランス脂肪酸は好ましくない)
    ・食塩摂取量は1日あたり5g未満

  2. 地中海食は、認知機能が正常な人または軽度認知障害(MCI)の方に対して認知機能低下や認知症のリスクを低減するために「勧めてもよい」。

    地中海食はイタリアやスペインなどの地中海沿岸諸国の食習慣です。日本食とは大きく異なるため、そのまま普段の食生活に取り入れるのは難しいかもしれません。

    <地中海食の特徴>
    ①果物や野菜を豊富に使用する、②オリーブオイル、ナッツ、豆類、全粒粉など未精製の穀物をよく使う、③乳製品や肉よりも魚を多く使う、④食事と一緒に適量の赤ワインを飲む。

  3. ビタミンB・E、多価不飽和脂肪酸、複合サプリメントは、認知機能低下や認知症のリスクを低減するために「勧められない」。

    ビタミンB・Eや多価不飽和脂肪酸は、大切な栄養素の1つではありますが、これらの複合サプリメントによる補充では認知機能に対する効果は認められなかったとされています3,4

日本人にとって「健康的なバランスのとれた食事」とは?

日本の食事は、季節に応じてさまざまな食べ物を組み合わせることが特徴で、バランスのとれた食事であるといえます。
厚生労働省のスマート・ライフ・プロジェクトでは、健康な心身の維持・増進に必要とされる栄養バランスを基本とする食生活が、無理なく維持している状態を「健康な食事」とし、主食・主菜・副菜を組み合わせた食事を推奨しています5

生活習慣病予防その他の健康増進を目的として提供する食事の目安6
(一般女性や中高年男性で、生活習慣病の予防に取り組みたい人の目安)

  • 料理Ⅰ、Ⅱ、Ⅲを組み合わせて650kcal未満
    (単品の場合は、料理Ⅰ:300kcal未満、料理 Ⅱ:250kcal未満、料理Ⅲ:150kcal未満)
  • 食塩含有量(食塩相当量)は3g未満

「ま・ご・た・ち・わ・や・さ・し・い」を取り入れましょう

「まごたちわやさしい」は、豆、ゴマ、卵、乳、ワカメ、野菜、魚、シイタケ、芋の頭文字をとったものです。これらの食材を取り入れると必要な栄養素が摂れるといわれています7。ぜひ献立を考えるときに取り入れてみてください。

健康維持のために、主食・主菜・副菜を組み合わせ、栄養バランスのとれた食生活を心がけましょう。

糖尿病、高血圧などで医師や管理栄養士から食事指導を受けている場合は、その指導に従ってください。

(参考文献)
1,Ogawa S. Geriatr Gerontol Int. 2014;14 Suppl 2:17-22.
2,WHOファクトシート
http://www.who.int/en/news-room/fact-sheets/detail/healthy-diet(最終閲覧日:2021年12月8日)
3,D’Cunha NM, et al. Br J Nutr. 2018;119:280-298.
4,Fitzpatrick-Lewis D, et al. CMAJ Open. 2015;3:E419-427.
5,厚生労働省スマート・ライフ・プロジェクト
https://www.smartlife.mhlw.go.jp(最終閲覧日:2021年12月8日)
6,厚生労働省健康局『生活習慣病予防その他の健康増進を目的として提供する食事の目安』(2015年9月)
https://www.mhlw.go.jp/file/04-Houdouhappyou-10904750-Kenkoukyoku-Gantaisakukenkouzoushinka/0000096860.pdf(最終閲覧日:2021年12月8日)
7,渡邊 昌. Comprehensive Medicine 全人的医療. 2018;17:63-74.

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