アルツハイマー病による軽度認知障害
(MCI)って治せるの?

監修 東京大学大学院医学系研究科神経内科学
 講師 岩田 淳

アルツハイマー型認知症の前段階であるアルツハイマー病による軽度認知障害(MCI)。認知症の中でももっとも頻度の多いアルツハイマー型認知症は現在治療法が確立されていませんが、アルツハイマー病によるMCIの場合は治せるのでしょうか。MCIの治療について詳しく解説します。

アルツハイマー病によるMCI段階の早期発見と早期対策で発症を遅らせる可能性がある

アルツハイマー病によるMCIはアルツハイマー型認知症と診断される前段階の状態です。アルツハイマー病は、原因物質と考えられているアミロイドベータが脳内に蓄積して引き起こされると考えられておりますが、現在の医学界における一様の見解は、アミロイドベータはMCIになる前から蓄積しており、アルツハイマー型認知症を引き起こす約20年前から蓄積が始まると考えられています.アルツハイマー病によるMCIを放置すると、数年後にはアルツハイマー型認知症を発症すると考えられています。

ビタミン欠乏症や特発性正常圧水頭症などの認知症症状を伴う疾患では、原因疾患を治療することで認知症症状を治せる可能性がありますが、アルツハイマー型認知症やレビー小体型認知症など、神経変性疾患と言われる原因で認知症に進んでしまうと、現在の医療では完治させることができません。

そう聞くとアルツハイマー病によるMCIの場合、絶望的なものに思えるかもしれませんが、早期に適切な対策を行うことで認知症の発症を遅らせられる可能性が否定されているわけではありません。「MCIは早期発見が重要」と言われているのはこのためで、早い段階で発見し対策することで認知症の症状が最後まで出なくてすむケースもあります。
では、具体的にどのような対策を行えばよいのでしょう。以下で、MCIの改善に有効と考えられている対策を紹介します。なお、対象はアルツハイマー病によるMCIに限らずMCI全般であることに留意ください。

MCI改善のための対策(1)運動

ウォーキングやジョギングといった有酸素運動です。
運動には、短い時間呼吸を止めて行う「無酸素運動」と深い呼吸で空気を体に取り込みながら行う「有酸素運動」があります。有酸素運動で持続的に体内に酸素を取り入れると、酸素によって脳に活発に血液が運ばれ、脳の血流が増加し、脳が若く保たれることが研究でわかっています。
より効果を高めるのであれば、運動にデュアルタスクを取り入れましょう。デュアルタスクとは、ふたつのことを同時に行う動作を言います。例えば、頭で計算しながらウォーキングする、しりとりしながら足踏みする、などがあります。ふたつのことを同時に行うことで脳の血流量がよりアップし、認知症予防に高い効果が期待できるとされています。

MCI改善のための対策(2)食事

食事の見直しは健康管理の基本です。認知症予防においても例外ではありません。
食生活で意識したいのは偏った食べ方をせずいろいろな食品をとること。その上で、下記のような栄養素をとることです。
野菜・果物(ビタミンC、E、βカロチン)をよく食べる
魚(DHA、EPA)をよく食べる
赤ワイン(ポリフェノール)を飲む

MCI改善のための対策(3)認知トレーニング

認知症では記憶力だけでなく集中力や計算力にも障害が起こることがあります。これらを鍛えることができるのが認知トレーニング。トレーニングと言ってもゲームや楽器の演奏など遊び感覚できるものも多く、楽しみながら脳に刺激を与えることができます。逆に、自身が楽しめないと続けることがストレスになり、かえって逆効果となる可能性があるので、以前から興味があったものから試してみるとよいでしょう。前述したゲームや演奏のほか、計算や日記、他人との会話だけでも認知トレーニングになります。

家庭でできる対策も多数、できることから始めましょう

MCIの段階は、認知症への進行予防としてとても重要な時期です。MCIだからと悲観的になるのではなく、前向きに対策に取り組むことが大切です。ご紹介した方法は家庭でも取り入れることができます。医師の指導を受けながら、できることから少しずつ始めてみましょう。

「認知症ねっと」との共同掲載

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