認知症の父に運転をやめさせたい

相談者
娘Aさん/40歳代
夫と子ども三人との五人暮らし。
仕事あり
介護対象者
父/70歳代
一人暮らし

相談内容

父は酒店を営んできました。母が亡くなってからも店を続け、父の生きがいでした。また、父は車が好きで、今では客が来ないのをいいことに、一日中車で出かけているようです。
父は、かかりつけ医から認知症の専門医を受診するようにと言われ、私が付き添いました。診断は「脳の萎縮の程度からすると、アルツハイマー病の初期です。まだ暮らしにはそれ程支障はないと思いますが、家族で見守ってください」というものでした。
アルツハイマー病と診断されて、車の運転が心配になりました。
実はこの半年で 3~4回車をぶつけ、こすった跡もたくさんあります。運転免許更新のお知らせが届いたとき、更新しないように説得したのですが、頑固な父は言うことを聞きません。しかたがないので、審査に通らないことを願いながら手続きを手伝いました。すると、すんなり更新できてしまい、驚きました。
父は、追突防止装置の付いた新車を買いました。一人暮らしなので誰も運転を止めることができません。親戚の人は「人身事故を起こしたらどうするんだ。申し訳なくてここに住めなくなる」と心配しています。車しか楽しみのない父なので、運転をやめさせるのはかわいそうですし、実際問題として、車がなければどこにも行けません。どうしたらよいか悩んでいます。

ポイント
  • 一人暮らしの父親が軽度のアルツハイマー病と診断された
  • 免許を更新し新車を買った父の運転が心配だ
  • 運転をやめさせたいがどうしたらよいか悩んでいる

相談員の対応

Aさんの相談は「父に運転をやめさせる方法はないでしょうか」というものでした。 父親は78歳でアルツハイマー病の初期です。車が大好きで運転に自信がある人なのでやめさせるのはせつなく、実際問題として、郊外での一人暮らしでは車がなければ医者にも買い物にも行けないので、黙認せざるを得ない状況もあるということでした。
しかし、車が傷だらけだと聞いて、「車の運転には一連の操作を順序よく行い、交通規則に従って適切に、瞬時に判断する能力が求められます。認知症の人から 『右折しようと思ったのに身体が動かなくて直進してしまった』という話を聞いたことがありますが、運動能力も大切です。認知症になるとだんだん運転がむずかしくなります」と説明しました。
運転をやめさせる方法として、廃車にする、鍵を替える、車が動かないように細工をすることなどを提案しましたが、「父の場合、それではダメだと思います。父は新車を買ったばかりですし、車に詳しいですから」と絶望的です。
そこで「実際にやめた人の例では、運転中に怖い思いをしたり、何時間も迷って不安な思いをしたり、車がボコボコになってあきらめたりと、本人の「自覚」がきっかけになるようです」と伝えると、「父はそこまで認知症が進んでいません。いつかは運転できなくなる日が来るでしょうが、その前に人身事故を起こしたらと不安で・・・。それに、家族と一緒に暮らしていれば、運転しないように注意したり運転を代わったりできますが、父は一人暮らしなので」と深刻です。
Aさんと二人で困りはてました。認知症の人のプライドに配慮しながら運転の危険性をわかりやすく話してくれる医師や警察官や地域の世話役の人がいるといいのにという話になり、また相談してもらうことになりました。