特定非営利活動法人つどい場さくらちゃん
理事長 丸尾多重子さん

介護する人、される人の垣根を取り払って、
みんながまじくる(交わる)場をつくりました!

認知症を地域で支えあう場として「つどい場」が注目されています。「つどい場」をつくったきっかけ、日頃の活動や抱負などについて、“まるちゃん”の愛称で親しまれる理事長の丸尾さんに伺いました。

「つどい場」とはどんなところですか。

【丸尾】認知症をはじめ、いろんな障害を抱えて生きる人、その人を介護する家族、その介護に関わる人・・・誰もひとりでは生きられないのが“人”ですね。本人、介護者、介護職、医療者、行政・・・縦割りの垣根を取り払って、みんながまじくる(交わる)場が「つどい場」です。
今日もね、おばあちゃんと介護している娘さん、お母さんを介護中で「つどい場」をご自分でつくりたいと見学に来られた男性、ご主人を介護してリハビリを毎日続けて8年目にご主人の言葉が出るまでにした女性、地域包括支援センターの社会福祉士さん、卒論を書いてる学生さん・・・いろんな人がつどうてます。

ここの利用料は1回500円。お昼代は別途500円。つどうたら、一緒に食べながらしゃべるのが大切やと思うのね。特に介護者は、作って、食べさせて、の繰り返しの毎日やから、自分のために食べてない。そやから、ここへ来たら、思いきり食べてもらおういうことで、ワンコインでお昼ごはんを出してるんです。

DV(家庭内暴力)のシェルターになることもあるんですよ。老老介護で、介護を受けているご主人が暴れ狂って介護者のおばあちゃんが主治医の携帯に悲痛な声で訴えてきたとき、保護されたおばあちゃんを受け入れる場になりました。何でもあり、が「つどい場」なんです。

「つどい場」を始めたきっかけは。

【丸尾】脳梗塞から認知症になった父を介護したとき、ヘルパー2級をとりました。在宅で看取った後、半年ほど、抜け殻みたいに ボーッとしてたんです。このままではあかんと思い立って、ヘルパー1級をとりに講座に通った。ですが、実習先の施設の入浴介助で、私、キレました。
機械浴 いうて、ストレッチャーにおばあちゃん縛って寝かせたままお湯に浸ける・・・怖がって、おばあちゃん、首から上だけ出して、泣き叫んでるんですよ。こんなん、お金をいただいてするサービスやない、と。

翌日から不動産屋をまわって、マンション借りて、「つどい場」を始めたんが2004年3月。個人で支える限界がきて、「多重子」の名前の通り、一度は多重債務者になりました(笑)。
NPO法人にしたのが2007年4月。現在の一軒家の借家に引っ越したのが2008年11月。多くのボランティアさんたちに支えられながら、介護保険事業を一切せずに7年やってきました。事業としては、見守りタイ、おでかけタイ、学びタイの主に3つあります。

それぞれの事業について教えてください。

【丸尾】あるとき、「つどい場」に来てはった認知症の深いおばあちゃんががんの手術を受けたんです。元小学校の先生やから、翌日から病室のカーテンを開けまくった。手を焼いた病院から電話がかかってきて、朝9時から夜9時まで見守りに行きました。そのおばあちゃんは、病院を放り出された後、「さくらちゃん」に私と一緒に7ヵ月半、住んでました。

病院から始まった見守り事業ですが、現在は1時間600円で介護者の代わりにご自宅で見守りや話し相手になることが多いですね。ヘルパーさんがされることはしません。独自事業として約150人の方を年700回訪問して、計900時間の見守りをしてます。西宮市の委託事業を含めると、年900回の訪問で1000時間を超えます。

おでかけタイは、本人と介護者が一緒に外出するのを支援するもの。認知症になっても、スーパーで買い物がしたい、喫茶店でお茶したい、イチゴ狩りやコスモス畑にも行きたいの。北海道旅行だって行けるんだということで、これまでに7回行きました。実費負担だから、こういうことの価値がわかる企業さんなりが協賛してくれるといいんやけど。

学びタイは、豊かな介護のために介護技術などを学んで元気になるための講座で、その集大成として「か・い・ご学会in西宮」を年1回開催しています。介護職の「か」、医療者の「い」、そして「ご」はご近所、つまり地域の人たち・・・。
三好春樹さんが始めたオムツ外し学会を2007年に「さくらちゃん」で主催したとき、会場を埋めた介護職のアンケートに「介護者の話を初めて聞いて新鮮だった」と書いてるのを読んで、私、またキレた。医者と患者、介護職と介護者や本人という垣根があったんでは、生き抜いて行かれへん。そやから、「か・ い・ご学会」ではみんなが平たい場で話し合えることをめざしてます。

今後の抱負をお聞かせください。

【丸尾】全国あちこちに「つどい場」ができるといいと思います。地域はみんなちがうからね、地域それぞれ、その人たちのカラーで「つどい場」が増えたらいい。
認知症になる人がこれからもっと増えてくる。介護保険制度では支えられないですもんね。地域の人たちで支えあう、そういう時代やと思います。そのためには、場がいるんですね。

家、商店、廃校になった小学校・・・地域には、探せば、空きがいっぱいあるやないですか。それを行政が提供してくれたらな、と思います。平成22年度の 『厚生労働白書』が「つどい場さくらちゃん」をコラムで紹介してくれたおかげで、少しずつそういう動きが増えてきました。夢が少し現実になってきました。

「ハイ、食べよッ!」。明るくあたたかいまるちゃんの声。部屋にこもる煮物の香りに、心がほどけるひととき。・・・。「つどい場」の意義は、訪れてみれば誰もが感じます。見学は随時受け付けています(事前にご連絡を)。
特定非営利活動法人 つどい場さくらちゃん
〒662-0972 兵庫県西宮市今在家町1-3
TEL・FAX:0798-35-0251 e-mail:sakurachanmaru@bca.bai.ne.jp

※インタビュー内容はすべて取材当時のものです。年齢や所属機関等、変更となっている場合がございます。