さいたま市西区南部圏域地域包括支援センター「くるみ」
センター長 看護師 小川洋子さん

包括支援センターは最初の受け皿「地域の茶の間」というイメージで考えています。

認知症についての啓発を自前の劇団で展開している地域包括支援センター「くるみ」。こうしたユニークな活動をはじめとするいろいろな取り組みについて、センター長の小川さんに聞いてみました。

この地域のことについて教えてください。

【小川】南部圏域は都内へ通勤する人たちのベッドタウンであると同時に、何代も前から生活している人たちもいるという新旧混ざり合った地域です。家の問題は家族で解決するという意識が残った土地柄ですね。

住民の人たちは包括支援センターの存在を知っていましたか。

【小川】発足当時ちょうどオレオレ詐欺が問題になっていて、非常に怪しまれましたね。特定高齢者へのアプローチが難しく、参加率が上がりませんでした。まずは名前を知ってもらわなければと思い、北部圏域の包括支援センターと協力していろいろな出前講座を行いました。

どのくらいの人数で活動しているのですか。

【小川】看護師1名、社会福祉士1名、主任ケアマネジャー1名の通常編成にケアマネジャー2名を加えて5人で活動しています。南部圏域はこの5名で65歳以上の方約9,200人をカバーしています。年中無休・早朝6:00から夜間まで連絡が取れる体制です。

活動の輪はどのようにして広げていますか。

【小川】ある民生委員さんから、行政にも相談していたかなり衰弱した高齢者の方について相談があり、一緒にご自宅を訪問したことがありました。私が入院を勧めたところ、その方は納得されて治療を受けてくれたんです。民生委員さんからたいへん感謝されました。こうしたことが次々に繋がって、活動の輪が広がっていきますね。

介護を勧める目安のようなものはありますか。

【小川】私は訪問看護を10年間経験しましたので、いろいろな家庭をみてきました。介護する人、される人、それぞれの気持ちや意見を確かめて寄り添いながら進めます。介護サービスを利用するまでの期間を、どのように支えるかが大切だと思います。

最初の対応次第で後の様子が違ってきますね。

【小川】認知症は最初のかかわりが本当に大切です。なかなか認めたくないから症状を否定するし、「そんなはずはない」と思いたいから医療に結びつかない場合が多いですね。みなさんに常日頃から「他人事ではない」と意識してもらえれば、初期の段階でわかるケースが増えると思うんですが。

介護を勧める上でご苦労なさったケースはありますか。

【小川】介護のサービス利用が増える一方、そうしたサービスを拒否する方もいます。男性の介護者の方に多いのですが、たいへんガードが固いですね。自分が面倒をみるからと何度訪問してもシャットアウト。数年がかりで、やっと介護サービスを利用していただけるようになったというケースがありました。

劇団について教えてください。

【小川】西区は小・中学生に認知症を理解してもらうために、「劇団にしく」を立ち上げました。「認知症を知ろう」をテーマに、授業の一環として学内で演劇を行います。団員は医師、西区役所の職員、社会福祉協議会、民生委員、地域包括支援センター、在宅介護支援センター、福祉施設の職員で構成されています。

劇についての反応はいかがでしたか。

【小川】子どもたちへの啓発活動は影響が大きく、PTAの反応もありました。子どもたちが「とても良かった」と親たちに言ってくれたおかげです。あちこちで上演することになりました。最近では、目的と会場に応じて多少アレンジして行っています。

認知症サポーター養成講座があると聞きましたが。

【小川】今では自治会や老人クラブから依頼がきます。地域のみんながどうも気になる人がいるけれど、自分たちが認知症をどのように理解したらいいのか教えてほしいというんです。だんだんそうした機運が高まってきて、いろいろと要請がくるようになりました。

一人暮らしの高齢者にはどのように対応したらいいでしょう。

【小川】地域での見守り活動が活発になっています。近所の方の「ちょっとした気づかい」や「声がけ」が一人暮らしの方を支えるのだと思います。ご近所の誰かが料理の「おすそわけ」を届けてあげれば、そこから会話が広がり交流が始まります。人づきあいとはそうしたものではないでしょうか。

介護している人へのサポートはありますか。

【小川】2010年4月から「介護者サロン」を催すことになりした。介護している人は肉体的にはもちろん、精神的にも疲れています。そうした人たちを支えるためのサロンは必要ですね。お茶を飲みながら、安心して充分に話ができる空間を提供していきたいと考えています。

将来への抱負をお聞かせください。

【小川】理想としては365日、24時間対応のセンターが必要だと思っています。しかし、それにはあまりにもマンパワーが足りません。また、さいたま市は委託方式で事業展開しているので、行政に包括支援センターを統括支援する部署が欲しいですね。
設立時、私たちは包括支援センターを"地域の茶の間"というイメージで考えていました。これからも、専門性を活かしながら、誰もが気軽に相談できる最初の受け皿でありたいと思っています。

地域にどのような形で役立つことができるかを常に考えている小川さん。その活動の原点にあるのは、誰もがセンターを身近に感じてくれるようにという熱い思いでした。言葉の端々に感じられる地域への温かい眼差しがとても印象的でした。
医療法人 博滇会博滇会 さいたま市西区南部圏域
地域包括支援センター「くるみ」
〒331-0061 埼玉県さいたま市西区西遊馬367-5
TEL.048-622-8103 FAX.048-622-8104

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