認知症 当事者/ 三橋 昭さん 認知症 当事者/ 三橋 昭さん
#2
次はどんな幻視が現れるのか
楽しみにしています

認知症 当事者 /
三橋 昭さん

一般的にレビー小体型認知症による幻視は怖いものという印象があります。
でも三橋さんは「毎朝何が出現するか楽しみ」と興味を持ち、
幻視をイラストにして動画投稿サイト「ユーチューブ」で紹介したり注1)、病気の体験とイラストを本にまとめたりしています注2)
そうした情報発信も認知症のイメージを変えるきっかけになるのでは。

そうだとうれしいですね。もともとはあくまで自分のための記録で、人に見せようという意識は全然なかったんです。せっかくレビーになったので、というのも何ですが、記録をつけられるうちはつけておこうと思って始めました。「生きている証」になるんじゃないかと。
主治医の森先生にイラストをお見せしたところ、「こういうの初めて見ました」とすごく気に入ってもらい、「自分だけで見るのはもったいないから本にしませんか」と勧められました。出版なんて考えてもいませんでしたが、「誰かが自分の記録を見ることで早期発見につながることもあるかもしれない。だったら本にしてもいいかな」と思いました。

新しい目標もできました。僕は高校を出てすぐに大島渚監督の映画の助監督を務めたのですが、その当時から映画はもちろん、映像や美術に興味がありました。その後、映画の世界から遠ざかり、一般の会社に長く勤めたのですが、やはり助監督をしていたということで作品をつくりたいという意識はずっとあったのでしょうね。今は大きな機材がなくても映像作品がつくれるので、幻視との付き合いの記録をうまく紹介できればと思っています。作品にするからには、構成を考え、動きをつけ、見ていて飽きないものにしないといけませんね。

注1) https://www.youtube.com/channel/UCSOjrjuNPs9rygue8fQXUxQ

注2)「麒麟(きりん)模様の馬を見た」(メディア・ケアプラス刊、1760円)

画像
仕事も地域活動も継続し、
好きなことに新たにチャレンジする意欲もあります。
とても充実しているようですが、
最近は病気の影響についてはどうですか。

診断を受けてからしばらくしてパーキンソン症状が強くなり、歩行への影響だけでなく動作が緩慢になりました。あとは足がモワーっとした重い感じが続くのは、できればなくなってほしいですね。ただまあ、そのレベルであれば付き合っていってもいいのかな、と。どんな病気もそうでしょうが、対応の仕方によってずいぶん違うような気がします。

やっぱり最悪な状況も考えます。診断後、ネットでレビーのことをだいぶ調べましたが、ある意味“一方通行の病気”じゃないですか。回復する可能性は低いということで、特にうちの奥さんはとても落ち込んでいました。僕自信は、一方通行なら一方通行なりに付き合っていくしかないんじゃないかと、開き直りといえば開き直りの心境です。そのほうが楽ですしね、奥さんも今は精神的にだいぶ安定したようで、僕が毎日、幻視を記録するのを楽しみにしてくれています。

一つずいぶん改善したこともあります。それは歩きです。実は以前から奥さんによく「もっと手を振ってちゃんと歩きなさい」といわれていました。でもなかなか実行する気になれなかったんです。
2019年の夏、渋野日向子選手が「全英女子オープンゴルフ」で優勝した時に、コースを移動する姿に目を奪われました。手の振り方、歩き方が実にきれいなんです。「あ、こういう美しい歩き方ができるんだったら手を振ってもいいかな」と思い、試してみたところ、少し大きく振れるようになりました。すると自然に足が出て、歩幅も広くなりました。やっぱり、「こういうふうになりたい」と思って見る目を持つことが大事なのかもしれませんね。美しいものに気づく目、興味を持てる目を持つことが……。

幻視の記録が認知症の早期発見のきっかけになれば、
というお話がありましたが、
受診をためらっている人に何かアドバイスはありますか。

クリニックにせよ病院にせよ、信頼することが大事だと思います。受診するからには、疑いを持って行くのではなく、信頼し、まずは気軽に相談してみる。その代わり相性というものがありますから、自分には合わないと感じたら、不安や疑問を抱えたまま無理に通い続けることはありません。ほかのところに行ってみたほうがいい。早期発見に向けて一歩足を踏み出すためには、そのぐらいの心持ちも必要だと思います。

あなたにとって認知症とは何ですか?(認知症 当事者/ 三橋 昭さん)
──あなたにとって認知症とは何ですか?

今は昔と違い、「がんになっちゃいました」とみなさん平気でいえると思うんです。それと同じに、「自分は認知症なので」と抵抗感なく話せるようになってほしいですね。僕自身は、不便な症状もいくつかありますが、「幻視が見えるって素晴らしいこと」というスタンスで認知症と付き合っていきたいと思います。

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