治療の目的と適切な対応タイミングについて

東京都健康長寿医療センター
脳神経内科 部長 岩田 淳
取材:2018年8月25日 山の上ホテル(東京)

アルツハイマー病の原因といわれるアミロイドタンパク質が脳内にたまっているけれど、まだ認知症の症状はみられない状態をどう考えればよいのでしょう。よく知られているメタボリックシンドローム(メタボ)と比べてみるとイメージしやすいかもしれません。

私たちは健康診断で「メタボです」といわれることがあります。それより重い高血圧や脂質異常症、糖尿病と診断される人もいます。でも、そのように診断された人たちはほとんどが「無症状」で、病気という自覚がありません。ではなぜ、そうした診断をつける必要があるのでしょう。その答えはただ一つ。メタボや高血圧などの段階で何も手を打たずに放っておくと、失明、心筋梗塞、脳梗塞、腎不全など、今の医学ではもうもとには戻せない状態に進んでしまう可能性があるからです()。あとに待ち受ける深刻な病気や障害を予防するためには、メタボや高血圧といった診断をつけて、治療を開始する必要があります。

認知症にも同じことがいえます。認知症という状態を、メタボにとっての終着点の障害と同様だと考えれば、その前の段階、つまり認知症の症状がまだごく軽い段階や、症状のない段階で食い止められるかどうかがカギとなるのです。今、世界中の研究者が、そのような発想のもとで認知症の発症予防につながる薬や運動、ゲームなどがないか探しています。

予防の手立てが見つかれば、健康診断などで自分の脳の状態を検査したいという人も増えるでしょう。認知症のイメージも、高血圧や糖尿病に近いものになるのかもしれません。

アルツハイマー病の進行段階と成人病との関係

成人病と同様に、アルツハイマー病も認知症という最終段階に進んでしまうと、あと戻りができません。このため、より早期の段階での対応に効果があるかどうかが、現在の研究の焦点となっています。

岩田 淳先生 提供

Dr.IWATAからのアドバイス

認知症を予防できると保証された方法はまだありません。ただ、運動にしろ、食事にしろ、生活習慣にしろ、認知症の予防や進行抑制に効果があるというデータが報告されている(※1)のは、基本的に健康に良いものばかりです。過去には、喫煙が認知症リスクを減らすといわれましたが、今では完全に否定されています。ですから、自分に合った予防法を組み合わせて実行することは、健康管理に役立つという意味でも理にかなっていると思います。

1)Fratiglioni L, et al.: Lancet Neurol, 3:343-353, 2004

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