若年性認知症

監修:九州大学病院
精神科神経科 診療准教授 小原知之

最新の推計によると、若年性認知症の人は全国に3.57万人いるとされています。認知症は高齢者の病気という認識がまだまだ多いうえ、家族にのしかかる経済面あるいは介護の負担も小さくないことから、若くして認知症と診断されたときに受ける本人や家族の衝撃は計り知れません。一方で、若いぶん体力もあり、発症しても仕事を続けたり、さまざまな活動に参加するなど、アクティブに日々を過ごしている人がたくさんいるのもまた事実です。

若年性認知症は65歳未満で発症した認知症の総称

若年性認知症は認知症の原因疾患ではなく、原因となるさまざまな病気が背景にあります。発症年齢に基づいた呼び方であり、厚生労働省は「65歳未満で発症した認知症」と定義しています。日本認知症学会は認知症を発症年齢によって、①若年期認知症(18~39歳)②初老期認知症(40~64歳)③老年期認知症(65歳以上)――に分けていますが、若年性認知症は①と②の総称ともいえます。

高齢発症の認知症との違いと公的な支援

高齢発症の認知症とは、多くの違いがあります。若年性認知症は40~50代の働き盛りに発症することも多く、一家の家計を支える人が仕事を休職、退職することになれば、経済的な打撃は深刻です。また、若年性認知症の方の親が高齢で、子どもが未成年だった場合は、介護の負担が配偶者に集中してしまうこともあります。

経済的な問題に対しては、さまざまな支援があります。

  • 自立支援医療制度により、医療費の自己負担が1割に
    若年性認知症に関連した疾患の治療に限られる
  • 傷病手当金の支給
    休職した場合。支給期間は1年6カ月
  • 精神障害者保健福祉手帳による、税金の控除、公共料金の減免など
    手帳の申請は初診の6カ月後から可能
  • 障害年金の支給
    初診の1年6カ月後から。国民年金や厚生年金の納付、障害の等級などの条件を満たした場合のみ

最近は、相談や情報交換ができる場も増えました。介護の悩みや利用可能なサービスなどについて相談できる若年性認知症コールセンターが全都道府県に設けられています。認知症の人や家族が集まり、情報交換や仲間づくりができる認知症カフェも増えています。こうしたサービスや場所を積極的に利用するなど、自分だけあるいは家族だけで抱え込まないことが、若年性認知症ではとくに大切です。

認知症があっても、できることは無限に。

若年性認知症は認知機能が多少低下していたとしても、職場の理解や協力があれば仕事を続けることもできますし、ボランティア活動なども可能です。仮に退職せざるを得なかったとしても、再び働ける場を提供することを目的とした就労支援事業所などもあります。そこは単に仕事をするだけでなく、新しい仲間をつくる場にもなります。

「以前は、病気になる前の人間関係の継続を大切に考えていました。でも、当事者の仲間や認知症の人がより良い生活ができるように一緒に考え、動いてくれる人たちと出会い関わるなかで、今は認知症になってからも新しい人間関係をつくれると実感しています」

「新しい人間関係をつくることも含め、私はたぶん、毎日何かに挑戦しているのだと思います。短い手紙を書くことも、こうして取材を受けることも挑戦です」

(2021年7月のインタビューより)

これは45歳で若年性アルツハイマー病と診断され、認知症本人の活動団体である『日本認知症本人ワーキンググループ』の代表を務める藤田和子さんのコメントです。藤田さんは、認知症の人が認知症とともに前向きに生きていける社会を実現するための活動に、精力的に取り組んでいます。
若くして認知症と診断されれば、不安から自分の殻に閉じこもったり、いろいろなことに対して投げやりになってしまうかもしれません。しかし人生の終着点は、考えるのが無意味に思えるほどはるか先にあります。少しずつ気持ちを前に向け、自分ができること、やりたいことを見つけ行動してみてください。認知症にならなければできなかったような、充実した第二の人生を送ることができるはずです。

(参考文献)
認知症 超早期時代の羅針盤
認知症疾患診療ガイドライン2017
https://www.neurology-jp.org/guidelinem/degl/degl_2017_05.pdf
東京都健康長寿医療センター研究所 わが国の若年性認知症の有病率と有病者数
https://www.tmghig.jp/research/release/2020/0727-2.html

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