血管性認知症とは?原因と症状

監修:東京慈恵会医科大学
精神医学講座 教授 繁田 雅弘

血管性認知症はアルツハイマー型認知症に次いで多い認知症です。脳梗塞(脳の血管が詰まる)や脳出血(脳の血管が破れて出血する)など、いわゆる脳卒中(脳の血管障害)にともなって起こる認知症です。血管が詰まり血流が不足している領域の神経細胞の機能が失われたり、出血によってたまった血液に脳が圧迫されたりすることで、さまざまな認知症の症状が現れます。

原因 全認知症の約20%が血管性認知症

厚生労働省研究班の疫学調査によると全認知症のうち19.5%が血管性認知症となっています。60歳~70歳台の男性に多い傾向があります。最新の調査によると、65歳未満で発症する若年性認知症においても、アルツハイマー型認知症に次いで多い原因疾患となっています。
血管性認知症は脳梗塞や脳出血によって引き起こされます。したがって高血圧や糖尿病、脂質異常症といった基礎疾患、ストレスや喫煙、肥満、メタボリックシンドローム、大量の飲酒などの脳卒中の危険因子は、血管性認知症の発症リスクを高めるといえます。
ちなみに救急搬送されるような大きな発作だけが認知症の引き金になるわけではありません。自覚症状がない小さな梗塞や出血が繰り返されることで症状が出てくることもあり、認知症の原因としてはむしろそちらのほうが多くなっています。

症状 障害される部位に応じてさまざまな症状が生じます

血管性認知症でも、もの忘れや見当識、実行機能の障害などアルツハイマー型認知症やほかの認知症と同じ症状が生じます。初期のうちはもの忘れは目立たず、手順通りに物事を進められない実行機能の障害がみられることが多いです。このほかパーキンソン症状や手足の麻痺、排尿障害などの身体的な症状が生じたり、抑うつや感情失禁(突然泣きだしたり笑い出したりする)、夜間せん妄などが起こることもあります。
障害される脳の領域によってこれらの症状が生じたり、生じなかったりするのが血管性認知症の特徴です。このため、たとえば記憶を司る脳の領域が健在ならば、実行機能の障害や身体的な症状が生じていていも、自分自身の状態を自覚できるわけです。自身の障害を実感しやすいぶん、ほかの認知症よりも抑うつになりやすい傾向があります。

検査 頭部MRTやCTで梗塞や出血がみられます

脳梗塞や脳出血は、頭部MRIやCT検査で確認することができます。血管性認知症では、前頭葉や側頭葉、後頭葉、視床、海馬など認知機能に関わる部位にしばしば梗塞が認められます。脳血流SPECT検査でも、多くの場合、梗塞の箇所と関連のある領域で血流の低下が認められます。梗塞や出血がなくても、血管が狭くなることで血流が滞り、認知症の症状を呈していることもあるため、SPECTのほかMRA(脳の血管を画像化)や脳血管造影検査を行うこともあります。

経過 発作後に認知症を発症した場合は階段状に進行

脳卒中の発作後に認知症を発症した場合は、階段状に症状が進行していきます。症状が出現あるいは悪化したあとは、しばらくその状態が維持されます。一時的な改善がみられることもあります。しかし、再度梗塞や出血が起こると一気に症状が進みます。
一方、大きな発作はなく、小さな梗塞や出血が多発して認知症の症状を引き起こしている場合は、階段状の経過を示さないことも少なくありません。軽微な症状の悪化が連続しており、全体として緩やかに進行しているようにみえます。

治療 薬による治療と並行して本人に合わせた働きかけを

一度失われた神経細胞の機能は元に戻すことはできません。そして血管性認知症は、脳梗塞や脳出血の再発にともなって悪化していきます。その時点での状態を保つためには発作の予防に努めることが特に重要になります。
高血圧や糖尿病、脂質異常症など再発につながる基礎疾患に対しては、それぞれに合わせた薬物治療を行います。脳卒中そのものの予防に対しては血液を固まりにくくする薬や降圧薬が用いられます。規則正しい食生活や運動、禁酒、禁煙などの生活習慣の改善も大切です。血管性認知症はアルツハイマー型認知症を合併、併発していることもあり、その場合は抗認知症薬が使われることもあります。

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