血管性認知症にみられる症状と適切な対応

監修:大阪大学大学院 医学系研究科
精神医学分野 教授 池田 学

血管性認知症でみられる主な症状と、それに対する適切な対応について紹介します。

歩行障害

歩幅が小さくなる(小刻み歩行)、幅広歩行などがみられます。

歩行障害への対応

転倒を予防するという視点から、日常生活におけるイスからの立ち上がりや階段の上り下りなどの動作には特に注意が必要です。段差をなくしたり、手すりをつけたり、家の中にも危険がないか、見直してみましょう。

意欲の低下・抑うつ症状

意欲や自発性がなくなったり落ち込んだりすることがしばしばあります。

意欲の低下・抑うつ症状への対応

血管性認知症では、ご本人に「できないこと、わからないこと」の自覚(病識)があり、悲しみや歯がゆい思いなどを強く感じています。したがってプライドを尊重して、ほめる、感謝するなど、ご本人にプラスの感情が生じるように接することが大切です。デイサービスやデイケアを利用して、専門職に活動性を上げてもらうことも重要です。

失語症

大脳の言葉をつかさどる部分(言語中枢)が脳卒中などで傷つくと「言いたい言葉が言えない」「言い間違いをする」「相手の言葉が理解できない」など、失語症が現れ、コミュニケーションをとることが難しくなります。

失語症への対応

医療機関や訪問で言語聴覚士などからリハビリ治療を受けることが重要です。専門家の指導を受けて、ご家庭でもリハビリはできます。「おはよう」「いただきます」などの簡単なあいさつや、ゆっくりとした日常の簡単な会話から始めるとよいでしょう。言葉をカードに書いておいて、言いたいことをカードで伝えるという方法もあります。

嚥下(えんげ)障害

脳血管障害によって、摂食(食べ物を目で確認して口に入れる)および嚥下(噛み砕いた食べ物を飲み込む)に関連する知覚や運動の障害が生じると、うまく食べられない、かめない、飲み込めない、むせるなどの症状が認められることがあります。このような嚥下障害の原因疾患の約40%が脳卒中であるといわれています。

嚥下(えんげ)障害への対応

嚥下障害が生じると、食べられないことによる栄養の低下や、食べ物の気道に流入する「誤嚥(ごえん)」による肺炎(嚥下性肺炎,誤嚥性肺炎)が起こることがあります。
嚥下障害が軽度な場合には、誤嚥が起こりにくいようにやわらかく調理する、ゼリー状にする、とろみを付けるなどの工夫を心がけましょう。また、口腔ケアも大切です。丁寧なケアを継続することで、口腔内の細菌を除去し、口腔内の衛生状態を改善させることができます。言語聴覚士による嚥下障害に対するリハビリテーションも有効です。

記憶障害

初期には記憶障害は比較的軽いのが特徴です。進行に伴って覚えるのに時間がかかる、思い出すのに時間がかかるといった記憶障害が起こります。

記憶障害への対応

つらいのはご本人です。あまり深刻にとらえず、長い目で見守ることもときには必要です。

感情失禁

感情のコントロールがうまくいかなくなった状態です。感情を少し刺激されただけでも笑ったり、怒ったり、泣いたりしてしまいます。

感情失禁への対応

突然ご本人が笑ったり怒ったりすれば、驚くのもやむを得ない状況ですが、冷静さを失わず落ち着いて対応することが大切です。感情的に対応するのは逆効果です。興奮させないように、ご本人の話を聞く姿勢を示すことを心がけましょう。

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