心身の管理

5.体重

  • 肥満と認知障害(※1) は密接に関係していて、特に中年期に認知症機能低下のリスクを高めるとの研究がある(※2)。
  • 体重を減らすことは、認知機能障害の病因に関連するさまざまな代謝因子(グルコース)を改善することにより、認知症のリスクを減らす(※3)が、過剰な減量、低体重は危険。
推奨
  • 太りすぎの人は、バランスの取れた食事で体重を減らす。
  • 食事中の炭水化物として、グリセミック指数(血糖値上昇の度合い)の低い食品(豆、レンズ豆、オーツ麦、無糖の果物)を優先する。
  • 座りがちな行動を減らし、身体能力に適した定期的な毎日の身体活動(例:歩行)をする。

1)Albanese et al., 2017

2)Bennett et al., 2009

3)Guidelines for primary health care in low-resource settings,2012

6.高血圧

  • 中年期の高血圧は、高齢期の認知機能低下の危険因子である(※4,5)。
推奨(※6)
  • 高血圧は、健康的な食事を取り、適正体重を維持し、充分な量の運動など、生活習慣を改善することで予防できる。
  • 適切な治療。降圧薬を利用して、血圧をコントロールすることが重要。

4)Elias MF, et al Hypertension. 2012:60(2):260−268

5)Musini et al., 2009

6)HEARTS Technical package for cardiovascular disease management in primary health care: evidence-based treatment protocols

7.高血糖

  • 詳しいメカニズムはまだ分かっていないが、糖尿病の人が血糖コントロールを適切に行わないでいると、認知機能が低下するリスクが上昇するという報告がある(※7)。
  • 血糖コントロールが悪い場合は、認知機能の低下と関連がある(※8)。
推奨(※9)
  • 血糖コントロールを改善し、高コレステロールと高血圧を治療すれば、認知症のリスクが低下する可能性がある。
  • (1型糖尿病)毎日のインスリン注射。
  • (2型糖尿病)血糖コントロール目標が食事の変更、健康的な体重と定期的な身体活動で達成されていない場合は、2型糖尿病の経口血糖降下薬。

7)Luchsinger, 2010; Prince et al., 2014; Profenno et al., 2010

8)Yaffe et al., 2012

9)Package of essential NCD interventions for primary health care: cancer, diabetes, heart disease and stroke, chronic respiratory disease,2010

8.脂質異常(高脂血症)

  • 血清コレステロール値の上昇は、重要な修正可能な心血管リスク要因の一つ。世界の虚血性心疾患の3分の1は脂質異常症に起因しており、年間260万人が死亡している(※10)。
  • 血中コレステロール値の上昇は認知機能低下のリスク増加と関連している可能性があるという考えは、1970 年代半ばからあり(※11)、以来、多くの疫学的研究により、高血清コレステロール値と認知機能の低下は密接な関係があるとされている(※12)。
推奨
  • 治療(薬剤)による脂質異常症のコントロール。
  • 生活習慣の改善による脂質異常症の抑制。

10)WHO, 2019b

11)Richardson et al., 2000

12)Kivipelto et al., 2002; Solomon et al., 2007; Whitmer et al., 2005

9.こころの健康

  • うつ病と認知機能低下および認知症を結び付けるエビデンスは多くあり、2014年に報告されたレビューでは、32の研究を組み合わせて、うつ病が認知機能低下のリスクに及ぼす影響を調べたメタ分析を行い、うつ病の存在が認知機能低下のリスクをほぼ2倍にしたと報告した(※13)。
  • うつ病は、認知症の前触れであるとともに、認知障害が高齢者のうつ病の主な症状である可能性も示唆されている(※14)。
推奨
  • 心理教育(必要に応じて、個人とその家族)。
  • 現在のストレス要因への対処。
  • 社会のネットワークに参加する。
  • 抗うつ薬の服用(併用や副作用には注意)

13)Prince et al., 2014

14)Camus et al., 2004; Jorm, 2001; Kales et al., 2005; Schweitzer et al., 2002

10.聴力

  • 聴覚障害は、機能的能力と社会的および感情的な幸福を衰弱させる結果をもたらす。聴覚の悪化は、他の人とコミュニケーションをとる能力に影響を与え、その結果、欲求不満、孤立感、孤独感を感じることがある(※15)。
  • 英国の医学誌『ランセット』委員会は、難聴は認知機能低下のリスクをほぼ2倍すると発表した(※16)。
推奨(※17)
  • 聴力、聴覚のリハビリテーションのために、アウトリーチ(社会活動)などを通じて、コミュニケーションをはかる。
  • 補聴器は、聴力の低下を最小限に抑え、毎日の機能を改善するため、難聴の高齢者には適している。

15)Wilson et al., 2017

16-1)Ciorba et al., 2012

16-2)Livingston et al., 2017

17)WHO Guidelines on Integrated Care for Older People (ICOPE),2017

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