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安眠できる「正しい枕の選び方」を睡眠のプロに聞いてみた

「最近よく眠れず、疲れが取れない……」

こんな悩みに苦しめられている人は、普段使っている枕に原因があるかもしれません。枕は睡眠の質だけでなく、美容や健康にも多くの影響を及ぼすと言われています。そこで今回は、安眠が叶う正しい枕の選び方について、オリジナル枕もプロデュースされている快眠セラピストの三橋美穂さんに伺いました。

間違った枕選びは安眠を妨げるだけでなく、いびきや肩こりの原因になることも

そもそもですが、枕にはどのような役割があるのでしょうか?

枕は「頭を守る」というだけでなく、「立っているときの自然な姿勢を睡眠中にも保つ」という役割を担っています。仰向けの姿勢で寝たときにできる、首から後頭部とマットレスの隙間を適切に埋めてくれるのがいい枕。実は皆さんが思っているより低い枕のほうが、自分に合っているケースが多いんです。

なるほど。もし自分に合わない枕をしている場合、どんな睡眠への影響があるのでしょうか?

枕が高すぎると、後頭部が押し上げられて気道が狭くなるため、いびきをかきやすくなったり、呼吸が浅くなったりして、安眠の妨げになります。また、頭が高く上がることで首と肩に負荷がかかり、首こりや肩こりの原因にもなりやすいでしょう。さらには、首のシワやほうれい線、二重顎の原因にもなりかねません。ほかにも、奥歯に力が入り、睡眠中に歯軋りをしやすくなることなども指摘されています。枕が高くていいことって、実は一つもないんですよね。

安眠妨害だけでなく、美容や健康への悪影響もあったんですね……。逆に「枕を使わない」という選択はどうでしょうか?

枕がないと、頭が心臓より低い位置に下がってしまうため顔がむくみやすくなりますね。また、首の骨のカーブを支えるものがなくなるので、枕が高すぎるケースと同様に、首や肩の凝りにつながります。さらに、枕がない状態で首を横に向けるとねじれるような形になるので、首の横にシワが入りやすくなることも考えられます。つまり、枕をしないのも枕が高すぎるのも、どちらも良いとはいえません。自分に合った枕を選ぶことがもっとも大切だと言えます。

自分に合う安眠枕は、「寝た時に枕をしていることを感じない」高さのもの

適切な枕を選ぶ大切さについて、よく理解できました。では、自分に合った枕を選ぶ上でチェックすべき具体的なポイントとは?

自分にぴったりの枕をすると、体と枕に一体感が生まれるので、寝た瞬間に枕をしていることを感じません。これは、仰向けに寝た時に体のどこにも負担がかからないからです。そして、首がスッと伸びて、呼吸が楽にできることに驚くでしょう。 さらに横向き寝の時にも、肩への圧迫感がなく快適に感じられるよう、枕の両サイドが少し高くなっているものを選んでください。このとき、背骨から首、頭にかけて真っ直ぐになっていることを確認します。つまり、仰向け寝でも、横向き寝でも快適で、寝返りしやすい枕が理想なんです。

ただし枕の高さは、マットレスへの体の沈み込みも影響するので、枕とマットレスをセットでチェックできると理想的ですね。

姿勢がいい人や細身の人は低い枕、猫背の人や体に厚みがある人は高い枕を

なるほど。たとえば、性別や年齢に応じた枕の選び方のコツなどはあるのでしょうか?

性別や年齢というより、「体型と姿勢」で選ぶべきですね。肩が開いていて背筋が伸びているような姿勢のいい人が横になった状態と猫背の人が横になった状態は、実は大きく異なります。前者の場合マットレスと枕との隙間が小さく、後者の場合はマットレスと枕との隙間が大きい。そのため、姿勢のいい人には低めの枕、猫背の人には少し高めの枕が合うと言えるでしょう。

ただ、逆の見方をすると、「高い枕をしているから猫背になってしまっている」という可能性もあります。そういう方は、枕を低いものに変える前に、まず姿勢を正す必要があります。寝る前に肩や腕、肩甲骨をまわし、ストレッチポールなどを使って胸を開くようなストレッチをするといいでしょう。そうして正しい姿勢に戻してから、その体の状態に合う低い枕を探してみてください。

また、体型と枕の相性について付け加えるのであれば、細身で姿勢がいい人は低めの枕、体に厚みがあり、首の後ろと枕の間に隙間ができやすい人は高めの枕が合うと思います。

バスタオルでできる! 自分に合う安眠枕の高さチェック方法

体型や姿勢によっても、適切な枕に違いがあるんですね。より正確に、自分に合った枕の高さをチェックする方法はありますか?

ウレタンシートを複数枚重ねて高さを調整できる枕であればいろいろと試してみるのが一番いいのですが、そういった枕ではない場合、バスタオルを使ってチェックしてみるのがいいでしょう。下記を参考にしてみてください。

(1)バスタオルを四つ折りにして、片側を首の長さに合わせて8~10cmほど折り込む
(2)折り込んだ箇所が内側に入るように、また半分に畳む
(3)低すぎる場合は、もう1枚バスタオルを持ってきて四つ折りや八つ折りにして下に敷く

先ほど紹介したように、自分に合った高さの枕は、寝た瞬間に枕をしていることを感じさせないもの。その状態になるまでバスタオルの高さを調整し、自分に合った枕の高さをチェックしてみるといいでしょう。その上で、適切な枕を購入するのがおすすめです。ご紹介したバスタオルアレンジは、外泊先での代用枕にもなるので覚えておくと便利ですよ。

適切な枕のメンテナンス方法と買い替え時期

快適に睡眠する上で、心がけるべき枕のメンテナンス方法はありますか?

枕の素材にもよりますが、そばがら枕は頻繁に天日干しを、羽根枕は直射日光を避け、風通しのいい場所で干した方がいいでしょう。ただし最近多いウレタンやパイプの枕に限っては、そこまでメンテナンスにこだわる必要はありません。詳しくは、枕メーカーの説明書に従うようにしてください。小さなことですが、枕カバーをこまめに洗濯して清潔に保つことも、安眠のポイントになりますよ。

なかなか見極めが難しいのが買い替え時期ですが、チェックポイントがあれば教えてください。

人間の頭は5kgほどの重さがあるので、やはり枕も経年劣化します。買い替え目安は1〜5年と、素材や使い方によって幅があります。適切な高さが保てなくなったり、クッション性が失われたりしてきたときが買い換え時期ですね。

さまざまな枕があって迷いますが、結局どんな素材の枕がおすすめなのでしょうか?

素材は好みで選んでください。どの素材も一長一短なので、「寝た時の感触が自分の好みかどうか」が重要です。注意事項としては、素材によって沈み方が異なるため、見た目の高さだけでなく、頭を乗せた時の枕の高さが適切かで選ぶことが大切ですね。ちなみに私は枕の開発もしていますので、寝室には枕が10個くらいあり、その日の気分や体調、姿勢、気候などに合わせて使い分けるようにしています。普通の方でも2~3個持っておくのがおすすめです。よければ参考にしてみてくださいね。

適切な枕を選んで安眠ライフを

枕は、大切な頭を守るという意味だけではなく、正しい姿勢を睡眠中もキープし、安眠へと誘う重要な役割を担っています。「寝られさえすれば、枕はなんでもいい」と思いがちですが、体に合わない枕は健康面や美容面で悪影響を及ぼし、その積み重ねが大きな不調にもつながりかねません。毎日使うアイテムだからこそ、自分に合った枕をきちんと選んでみてはいかがでしょうか。

〜快眠セラピスト・三橋美穂さんプロフィール〜

著者

三橋美穂さん

快眠セラピスト。寝具メーカーの研究開発部長を経て独立。これまでに1万人以上の眠りの悩みを解決してきた。とくに枕に関しては、頭を触っただけで、その人に合う枕を見極められるほど精通。全国での講演や執筆活動のほか、寝具や快眠グッズのプロデュース、ホテルの客室コーディネートなども手がける。主な著書に『眠トレ!ぐっすり眠ってすっきり目覚める66の新習慣』(三笠書房)ほか多数。
https://sleepeace.com/

取材・文:中森りほ 編集:ノオト 絵:かざまりさ

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