第3回 運転能力の目安があります。
「運転行動チェックリスト」で問題点を確認しましょう

更新日:2022/08/09

記事監修

高知大学保健管理センター医学部分室 准教授
上村 直人 先生

取材:2022年5月24日 高知大学

本人と家族の話し合いのきっかけ

運転能力の低下に早く気づくためには、具体的にどういう点に注目すればよいのでしょうか?

認知症も含め、病気などによって記憶力、注意力、視空間認知能力、自己コントロール力などが低下したときにみられる危険な運転行動を10項目に整理し、チェックリストを作成しました(運転行動チェックリスト参照)。複数の項目にチェックが入った場合は医療機関や警察に相談することをお勧めしています。特に6の「わき見運転」と10の「車間距離が維持できない」の両方に該当する場合は、交通事故を起こす危険性が非常に高くなるので注意が必要です。

原因となる病気は様々なので、病気を特定するツールではないにしても、受診のきっかけになるわけですね。

そう思います。チェックリストに当てはまる場合は、認知症の始まりかもしれませんし、先ほど(第2回で)述べたADHD(注意欠如多動性障害)だったり、あるいは糖尿病治療中の人が低血糖を起こして眠気に襲われたりしているのかもしれません。心臓病や睡眠時無呼吸症候群なども運転の支障となりえますので、治る病気を見逃さずにしっかり治療するためにも、一度医療機関に相談してみることをお勧めします。

高知大学保健管理センター医学部分室 准教授 上村 直人先生

チェックリストを使った人からはどういう感想が届いていますか?

新聞やテレビでチェックリストが紹介されたところ、「運転する高齢者本人と、同乗することの多い家族がそれぞれチェックをすることで、運転能力に対する認識の違いがわかった」「運転について家族で話し合うきっかけになった」といった感想をいただきました。「今までは、“もう歳だから運転はやめて”、“危ないでしょう”と一方的に言いすぎていました。こうしたチェックリストを使い、“こういうこともあるよね”と本人と一緒に確認する、一緒に気づく機会も必要ですね」といった声も届いています。

高齢者が家族と一緒に運動行動チェックリストを確認しながら、ハタっと気づく(!)シーン

自分の運転能力にプライドがあり、はたからとやかく言われるのを嫌う高齢者の方も多いでしょう。一方的に問題を指摘するのではなく、「こんなツールがあるからやってみない?」といったかたちで運転に目を向ける機会を作っていただければと思います。

運転行動チェックリスト

運転行動チェックリスト
高齢者が運転しながら行き先を忘れてしまったシーン
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