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認知症対応型通所介護(認知症デイサービス)の特徴と利用方法を解説します​

更新日:2023/03/06

記事監修

八千代病院神経内科部長/愛知県認知症疾患医療センター長
川畑 信也 先生

要介護の高齢者が自宅での生活を続けられるように、通いの場で日常生活支援や機能訓練を提供するサービスとしてデイサービスがあります。しかし、環境の変化に戸惑いやすく、関わり方次第で症状が悪化してしまうこともある認知症の人にとって、そうしたサービスが適切なのかどうか、不安は尽きないと思います。そんなときに利用を考えたいのが認知症対応型通所介護(認知症デイサービス)です。特徴や利用方法を解説します。​

認知症対応型通所介護(認知症デイサービス)とは

認知症対応型通所介護は、認知症デイサービスとも呼ばれ、要介護状態となった認知症の人が住み慣れた自宅での生活を続けられるように、食事などの日常生活の支援、生活機能の維持、向上のための機能訓練などを提供する通所型のサービスです。​
顔見知りのスタッフや利用者と一緒に訓練を行い、コミュニケーションを図ることで孤立感の解消、日々自宅で介護する家族の精神的、身体的な負担の軽減なども期待できます。​
提供するサービスの内容自体は一般的なデイサービスと大きくは変わりませんが、以下のような特徴があります。​

地域密着型サービス

認知症対応型通所介護は、認知症高齢者や要介護高齢者が住み慣れた地域での生活を続けられるように、市町村が指定した事業者が提供する10種類のサービスのうちの1つです。原則として同一市町村で暮らしている人しか利用できません。なじみの環境でサービスが受けられるため、リラックスして1日を過ごすことができます。

認知症に精通したスタッフによる専門的ケア​

認知症対応型通所介護の管理者は、認知症対応型サービス事業管理者研修を修了しています。働くスタッフも日々認知症の人のケアに携わっています。認知症および認知症の人についての十分な知識と豊富な経験を持つため、一般的なデイサービスよりも専門的なケアを提供することが可能です。​
機能訓練も生活機能の維持だけを目的としません。懐かしいおもちゃや写真、小物などを見たり触れたりしながら語り合う回想法、誰もが知る昔の童謡などを聞いたり歌ったりする音楽療法など、認知症の進行抑制や症状の緩和が期待できるプログラムも行います。

定員少人数で一人一人に手厚いサポート

認知症対応型通所介護の定員は通常のデイサービスよりも少人数で、12名以下となっています。スタッフ1人あたりに対する利用者の数が少ないため、一人一人に合わせた手厚いケアを提供することが可能です。人数が少ないうえ、顔見知りの利用者が多いため、不慣れな環境や集団を苦手とする認知症の人でも、安心して通うことができます。

認知症対応型通所介護の利用条件​

認知症対応型通所介護を利用するには、以下の条件を満たす必要があります。​

  • 医師から認知症と診断されている
  • 要介護1以上
  • サービスを提供する事業所と同一市町村に住んでいる(住民票がある)​

市町村によっては、域外からの利用を認めているケースもあります。お住まいの自治体に利用可能な事業所がない場合は、隣接する市町村にも問い合わせてみるとよいでしょう。
また、認知症対応型通所介護は認知症と診断されていれば、要支援の高齢者でもサービスを受けることができます。ただし、その場合は介護予防サービスの「介護予防認知症対応型通所介護」として利用することになります。自己負担額は要介護1よりもわずかに安くなっています。

認知症対応型通所介護のタイプ

認知症対応型通所介護のサービスを提供する事業所は3つのタイプに分けられます。

  • 単独型​
    特別養護老人ホームなどの施設に併設されておらず、認知症対応型通所介護を単独で行う事業所​
  • 併設型​
    特別養護老人ホームや病院などの施設に併設されている事業所​
  • 共用型​​
    認知症グループホームや地域密着型介護老人福祉施設などの食堂や居間などを利用してサービスを提供する事業所​

事業所タイプごとの自己負担額

利用料金は事業所のタイプによって異なります。単独型が最も高く、共用型は単独型のおよそ半額で利用することができます。1割負担の場合の自己負担額の目安(送迎の費用含む)は以下のとおりです。人件費や賃料などの地域事情を考慮し、この額に地域区分に応じた金額が加算されることもあります。

単独型

3時間以上4時間未満 4時間以上5時間未満 5時間以上6時間未満 6時間以上7時間未満 7時間以上8時間未満 8時間以上9時間未満
要介護1 540円 566円 853円 875円 989円 1,021円
要介護2 594円 623円 945円 969円 1,097円 1,132円
要介護3 650円 681円 1,035円 1,061円 1,204円 1,242円
要介護4 705円 738円 1,127円 1,156円 1,312円 1,355円
要介護5 759円 795円 1,219円 1,250円 1,420円 1,465円

併設型

3時間以上4時間未満 4時間以上5時間未満 5時間以上6時間未満 6時間以上7時間未満 7時間以上8時間未満 8時間以上9時間未満
要介護1 489円 512円 767円 786円 889円 917円
要介護2 538円 563円 849円 871円 984円 1,015円
要介護3 586円 615円 931円 955円 1,081円 1,115円
要介護4 636円 666円 1,011円 1,037円 1,177円 1,215円
要介護5 685円 717円 1,094円 1,122円 1,272円 1,314円

共用型

3時間以上4時間未満 4時間以上5時間未満 5時間以上6時間未満 6時間以上7時間未満 7時間以上8時間未満 8時間以上9時間未満
要介護1 265円 277円 443円 455円 520円 537円
要介護2 275円 288円 458円 470円 539円 556円
要介護3 284円 297円 475円 487円 557円 575円
要介護4 293円 307円 491円 503円 575円 594円
要介護5 303円 317円 507円 519円 595円 615円

厚生労働省 令和元年度介護報酬改定「指定居宅サービスに要する費用の額の算定に関する基準等の一部を改正する告示」を基に作成
https://www.mhlw.go.jp/content/12300000/000537337.pdf
(最終閲覧日 2022年10月27日)

これらの料金以外にも、食事代や介護福祉士の専門性や勤続年数に応じて加算されるサービス提供体制加算、栄養指導や口腔ケアなどが行われた場合はその費用も追加されます。詳しくは利用する事業所や担当のケアマネジャーに相談してみてください。​

まとめ​

認知症の人に限定したデイサービスである認知症対応型通所介護について解説しました。認知症の介護は、個々に合わせた関わりが求められることに加え、介護を要する期間も長く、家族の負担は小さくありません。認知症の人が少しでも長く住み慣れた地域での生活を続けるには、少人数のなじみの環境で認知症に精通したスタッフのケアが受けられる認知症対応型通所介護のようなサービスが、大きな助けになるのではないでしょうか。​

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