アルツハイマー型認知症とは?原因と症状

更新日:2021/12/22

記事監修

東京慈恵会医科大学 精神医学講座 教授
繁田 雅弘 先生

アルツハイマー型認知症は65歳以上の人では最も多い認知症です。脳の神経細胞が徐々に減っていく進行性の病気で、アミロイドβ(ベータ)と呼ばれる異常なたんぱく質の蓄積と神経原線維変化(過剰にリン酸化されたタウ蛋白の蓄積)という脳の中での2つの変化を特徴とします。このような変化は症状が出る20年以上前から始まっています。病気が進むにつれて脳が少しずつ萎縮し、さまざまな症状が出てきますが、進行は比較的ゆるやかです。

原因 加齢や生活習慣病などが発症のリスクに

アルツハイマー型認知症の有病率は歳を取るほど高くなり、男性よりも女性に多い傾向があります。加齢が最大の要因ですが、糖尿病や高血圧、脂質異常症などの基礎疾患があるとアミロイドβがたまりやすくなります。糖尿病の人はそうでない人に比べて発症するリスクが2.1倍になることが、国内の大規模な疫学調査で報告されています。寝不足やストレス、歯周病なども関連があるとされています。
遺伝の影響で発症することもありますが、家族性アルツハイマー病のように原因となる遺伝子がわかっているものはごくわずかです。ほかにもアルツハイマー型認知症になりやすい遺伝子も明らかになっていますが、あくまでリスクを高めるだけです。その遺伝子を持っているからといって必ず発症するわけではありません。

症状 新しく記憶できず、体験そのものを忘れてしまいます

アルツハイマー型認知症の人に最も多く見られる症状がもの忘れ(記憶障害)です。比較的最近のことを思い出せず、体験したことを忘れがちです。ただし、軽度認知障害(MCI:Mild Cognitive Impairment)やアルツハイマー型認知症の初期のうちは、もの忘れも軽く、加齢によるもの忘れと区別が難しいです。

加齢による"もの忘れ"、アルツハイマー型認知症の"もの忘れ"

日付や曜日、自分のいる場所がわからなくなるといった時間や場所の見当識障害のほか、言語の理解力の低下、道に迷うといった症状も見られるようになります。ほかにも意欲の低下や抑うつ、「お金を盗られた、通帳を隠された」といった物盗られ妄想が生じることもあれば、徘徊をしたり、怒りっぽくなることもあります。

アルツハイマー型認知症の症状

検査 海馬の萎縮が目立ち、脳内にアミロイドの蓄積を認めます

頭部MRI検査では側頭葉の内側にある海馬や海馬傍回(かいばぼうかい)、扁桃体(へんとうたい)などの萎縮が目立ちます。脳血流SPECT検査では、両側の側頭葉、頭頂葉や後部帯状回に血流低下がみられます。脳内のアミロイドβを画像化するPET検査では、前頭葉や後部帯状回、楔前部にアミロイドβの蓄積が認められます。

経過 発症してもしばらくは自立した生活が可能です

アミロイドβの蓄積などの脳内の変化は症状が出る20年以上前から進んでいることに加え、発症してからの全経過が10年を超えることも少なくなく、病気とは非常に長い付き合いとなります。症状が出ても初期のうちは、軽いもの忘れ程度で、日常生活に支障はありません。大事なことも自分で判断できますし、家族と話し合いをすることも可能です。
しかし病気が進み、もの忘れの程度が強くなると、スケジュールやお金の管理が難しくなるなど、家族や親しい人のサポートが必要になります。やがて、着替えや入浴、排せつなども難しくなり、日常生活を送るには家族や介護職による介助が欠かせなくなります。
最終的には歩行や会話も難しくなりますが、この段階に至るのは発症してからだいぶ先のことです。

治療 薬で進行を遅らせることが期待できます

今のところアルツハイマー型認知症を完全に治す薬はありません。しかし、進行を遅らせる薬はあります。回想法や音楽療法、現実見当識訓練などの非薬物療法を行うことで、身体機能や認知症によって生じた周辺症状の改善も期待できます。周辺症状に対しては抗不安薬や抗精神病薬、睡眠導入剤などが用いられることもありますが、まずは非薬物療法を行ったうえでの対応となります。

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